この記事では、理学療法士や作業療法士の給料アップに関して、景気(好景気・不景気)にフォーカスして考察しています。

ただし注意点として、この記事は理学・作業療法士の給料アップ(昇給・ボーナスなど)に直結する記事ではありません。

世の中の好景気・不景気と、私達理学・作業療法士の給料がいかにリンクしているかを垣間見ることで、世の中の仕組みを少しでも知ってもらうことを目的としています。

新人理学・作業療法士の皆さんは授業で医療分野の勉強はしているものの、経済に関しては疎いと思われるため、出来るだけ噛み砕いて解説しています(まぁ、私も社会人になってボツボツと勉強してきただけで、偉そうなことを言えないレベルではありますが・・)。

また、新人さんのみならず、ベテランの理学・作業療法士さんにも是非観覧して頂き、少しでも新たな発見があれば嬉しく思います。

※この記事では便宜上アベノミクスによる「インフレ」・「円安」・「株高」をひっくるめて「好景気」、その逆を「不景気」と表現していきます。
※この記事では「昇給」「ボーナスアップ」を含めて「給料アップ」と表現していきます。
※この記事の内容は医療・介護従事者全てに当てはまると思いますが、ひっくるめて「理学・作業療法士」と表現していきます。


理学・作業療法士の給料アップに好景気は追い風か?


以前、「竹中平蔵氏がトリクルダウンは起きないと明言!」と題した記事で反響を呼びましたが、この記事は「好景気は人々に恩恵をもたらす」という当然の前提条件のもとに作成してものです。

一方で、医療従事者(以下は理学・作業療法士と記載)も好景気の恩恵を受けることができる職業と言えるのでしょうか?

まず結論から言うと、(残念ながら)理学・作業療法士は「好景気による恩恵を受けにくい側面を持った職業」といえます。


なぜなら、大企業が好景気によってどんどん収益を拡大していくのに対し、理学・作業療法士の給料は診療報酬(あるいは介護報酬)という「全国で一律に定められた報酬」がベースとなっているからです。

そのため、大企業の社員がガンガンと昇給・ボーナスアップしていくのを横目に、ただ羨ましく眺めているしか出来ないということになります。
※もちろん、診療報酬以外の要素として自身の努力で給料アップを勝ち取ることも可能ですが、大企業の並とまではいかないのではないでしょうか?

更には、好景気は物価の上昇を伴うため、「給料は上がらないのに、物価は上がる」つまりは「物が買いにくい」という状況に陥ってしまいます。


ただし、この点を逆説的に考えると、理学・作業療法士は不景気による影響を受けにくい職業と言えるのかもしれません。

なぜなら大企業の社員が不景気によってボーナスカットやリストラに巻き込まれる可能性があるのに対して、医療従事者の給料は前述した様に「全国で一律に定められた報酬」がベースになっているため、大きな変化が起きにくい側面を持ってるからです。

更には、不景気は物価の下落を伴うため、「給料は下がらないけど、物価は下がる」つまりは「物が買い易い」ということになります。


つまり、株式投資で表現するならば、大企業は「国の景気が上向きの際に買うことが推奨される景気敏感株」、医療職は「国の景気が下向きの際に(下落リスクが少ないという意味で)推奨されるディフェンシブ株」と表現できるかもしれません。


つまり、理学・作業療法士の給料アップに不景気は追い風?


大企業社員と医療受持者(以降は理学・作業療法士と記載)の給料の比較を、大雑把ではありますが景気・不景気と絡めながら記載してきました。

ただ、物事はそう単純ではない点も覚えておいたほうが良いかもしれません。

例えば、「理学・作業療法士の給料は診療報酬(あるいは介護報酬)という全国で一律に定められた報酬がベースになっている」と前述しました。

そして、これらの報酬は「社会保障費」というものの一部となります。

ですが、「社会保障費」は高齢化社会によって年々増えており、その「社会保障費」の財源確保が年々難しくなってきています(というか借金が膨れ上がっています)。

これは家計で言うと「借金ばかりしている一方で、大盤振る舞いに散財している」という訳の分からない状態と言えます。

そして、これを是正するには「沢山稼いで借金を減らす(と同時に、可能であれば大盤振る舞いを止める)」といことが大切となります。

では、国でいうところの「沢山稼ぐ」とは何を指すのでしょう?

それは税金を企業や国民から多く徴収するということです。

ちなみに税金は、所得税や法人税などの「直接税」と、消費税などの「間接税」に分かれるのですが、どちらの税も多く徴収したいということになります。


理学療法士・作業療法士の給料に影響する「直接税」


「直接税」を多く徴収する手段としては、法人税を上げるという手段もありますが、何よりも「好景気によって大企業を含めた多くの企業の収益を上げること」が国の税収を増やす一番王道な手段となります。

つまりは、理学療法士の給料アップを考えた際に(大企業の社員と比べて遠回りではありますが)以下の方程式が成り立つこともあったりします。

①好景気によって税収が増える

②(国が無駄遣いをしないという前提にたてば)社会保障費の財源が増える

③社会保障費の一部から捻出される診療報酬(や介護報酬)もアップする

④理学・作業療法士の給料が増える(可能性がある)

つまりは、「好景気によって理学・作業療法士は恩恵が受けれない。つまりは不景気のほうが良い」といのは一つの側面を突いてはいますが、やや短絡的とも言えます。

不景気では社会保障費の財源が確保できないので「無い袖は振れない」ということで、好景気時よりも診療報酬(や介護報酬)が削られ易くなります。

※現在の景気は「好景気に向かいつつある」という状況で、好景気とも不景気とも言えず、高齢化社会の波を受けて診療報酬が削られる方向となっています。もし診療報酬が削られないほどの財源を確保するためには、確実な好景気を迎える必要があります。


重複しますが、一番最悪なパターは以下となります。

「不景気から徐々に脱却してきて(まずは大企業に恩恵が行き)、今後は社会保障費などにも財源が回せそうだという矢先(理学・作業療法士の給料も上がりそうな一歩手前)に景気が失速して、もとの不景気に戻ってしまう)」

このパターンだと理学・作業療法士は「好景気の恩恵(給料・昇給・ボーナス)が受けれない」+「社会保障費の財源が確保できず診療報酬も削られる」というダブルパンチを受けてしまいます。

そして、アベノミクスは中途半端な景気回復にとどまって、今後は失速する可能性をはらんでおり、つまりは上記の「最悪なパターン」となりつつあります。


理学療法士・作業療法士の給料に影響する「間接税」


ついでに「間接税」である消費税にも言及しておきます。

消費税は国民の消費を冷え込ませる要素を持っています。

従って「一般的には」増税延期は景気にメリットといえます。

ただし理学・作業療法士にとっては、話がもう少し複雑になってきます。

というのも「消費増税によって得られた税収の一部は社会保障費にまわす」とされているからです。

そして、前回の「10%への消費増税を延期する」という国の決断は、国民にハッピーな側面がある一方で、理学・作業療法士にはネガティブな側面も出てくるということになります。

事実として、今年(2016年)の診療報酬改定は、増税が延期された事が加味された結果であると国は明言しています。
※つまりは、もし10%の増税がなされれば、改定内容はもっと別な内容になっていたかもしれません。

そして、2017年からの消費増税も延期となる可能性が出てきており、これは「一般的」には良い事ですが、これも「理学・作業療法士」から見ると微妙ということになります。

※ただし「増税延期」→「好景気」→「社会保障費の財源が増える」→「理学・作業療法士の給料が上がる」という方程式も成り立つため一概には言えないということになります。


理学・作業療法士の開業には影響するのか?


最後に余談として、「理学・作業療法士の開業」を「景気・不景気」と絡めて考察してみようと思います。
※理学療法士・作業療法士は開業権がないため、ここでの「開業」は整体師としての開業を指します。

これまで「大企業の社員」と「理学・作業療法士」では給料へ与える好景気・不景気の影響が異なる点を記載してきましたが、「開業している理学・作業療法士」は好景気・不景気のどちらが有利なのでしょう。

これは結論から言ってしまうと、「何とも言えない」ということになります。

「なんだそりゃ」と思った人もいるかもしれませんが、好景気・不景気のいずれにおいてもメリット・デメリットはありそうです。

ここからは、いくつかのパターンに分けて記載していきます。


不景気から好景気への移行段階:

不景気から好景気への移行段階では、物価の上昇も伴うため、それに合わせて「施術料金」も上げなければ生活が苦しくなります。
従ってお客に値上げをお願いする必要が出てくるため、あの手この手で「まぁ、値上げも仕方がないか・・・」と納得してもらう必要があります。
※それが面倒なら、薄利多売を覚悟で施術料金は据え置いて「こんな状況下でも私は値上げしませんよ!」と恩着せがましくアピールするのも一考かもしれません。


好景気な時期:

次に、好景気な時期における整体について考えてみます。

まずは整体の対象となる人達は(一般的に)「レッドフラッグ(緊急性を要する重篤な症状)」ではない人達です。
※レッドフラッグな時点で病院へ行く必要があります。

従って、「病院へ行くほど重篤ではないが、体調を良くしたい」という人が対象となります。
更には「生活に困窮しておらず、整体にお金を回すだけの余裕がある人達」という可能性も高いと思われます。
こう考えると「お客の羽振りが良いほうが集客し易い」という点で考えたなら、好景気なほうが良さそうです。

ただし注意点として、あなたがターゲットとしている客層にもよります。
つまりは大企業に勤めているバリバリなサラリーマン(あるいは、その妻)をターゲットとしているなら問題ありませんが、高齢者であれば話は変わってきます。

何故なら、年金が主な収入源である高齢者にとって、好景気による「給料アップ」という恩恵は受けれず、「物価上昇」というデメリットだけをこうむってしまうので、生活に困窮して整体どころではなくなる可能性があります。
※もちろん、ここまでに述べてきたように、しっかりとした好景気が何年も続くと徐々に社会保障費の財源が潤って、年金額の増額といった恩恵も受けれるようになるかもしれませんが・・・・



不景気な時期:

最後に不景気な時期における整体について考えてみます。
好景気から不景気に移行する時期であれば、物価の低下に伴って自身の施術料を値下げするという選択肢も出てくるので、その選択をした場合はお客に喜んでもらえるかも知れません(その分、薄利多売になりますが)。

また、不景気真っ只中の時期においては、高齢者が多い客層であれば(好景気な時期とは逆となり)金銭的な余裕ができて通ってもらい易くなるかもしれません。

一方で、大企業のサラリーマン(あるいは妻)はリストラや家計を切り詰める羽目になり、整体への足は遠のくかもしれません。

また、整体自体は廃業というリスクをはらんではいますが、一度軌道に乗ってしまえば中小零細企業でリストラにおびえる人たちと比べれば、安定した仕事が可能かもしれません。

※ただし、不況下のメリットは医療従事者も同様なため、あえて不況下で整体をするほうが安定的かと言われればケースバイケースで、医療従事者と比較した場合における整体師の優位性は乏しいと言わざるを得ないと思います。

※もちろん、優位性があるという人もいると思うので、ネットで色々と検索して、自分でも考えてみてください。

※また、今回は「好景気・不景気」のみにフォーカスを当てて理学・作業療法士の開業について記載しましたが、これらの要素だけで整体院の運営が決まるわけではない点は言うまでもない事です。その点はご了承ください。


「新人理学・作業療法士の給料」の関連記事


この「新人理学・作業療法士の給料が上がるのは好景気・不景気どっち?」では医療従事者にフォーカスを当てて「給料アップと景気の因果関係」を記載してきました。

一方で、これとは逆に「一般的に言われている給料アップと景気の因果関係」について興味のある方は、以下も参照してみて下さい。

竹中平蔵氏「トリクルダウンなんか起きない」|朝まで生テレビ2016年1月1日元旦スペシャル


スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加