理学療法士・作業療法士が整体院を開業する場合は、他の整体院との価格競争に当然のことながら巻き込まれてしまう可能性があります。

今回は、そんな「価格競争」にフォーカスを当てて理学療法士・作業療法士の開業を思考してみます。

※この記事では「理学・作業療法士が整体師として整体院を開業する」という設定なため「起業」ではなく「開業」という言葉を用いています。

競争のある社会では、価格競争も起こりやすい


最近は電力自由化に伴い、電機会社を自由に選べる時代になりました。

なぜ政府が電力自由化に踏み切ったかというと、一つには「電力を一部の会社だけで扱っている状態(これを寡占状態と呼ぶ)よりも、価格競争によって値段が安くなり、消費者にメリットが及ぶ」ということが理由に挙げられます(他にも自然災害が起こった際のリスク分散などの様々な理由があります)。

あるいは、規制緩和によって「他社よりも良い製品を作ろう」といった(価格以外の面における)インセンティブも働きやすくなります。

そして、理学療法士が整体という業種に参入すると「病院で働いていた時よりも、客に選ばれるように、自身の(手技療法などの)技術を今まで以上に身に着けようという意識が高まる」と言っている人もいますが、経済学的に「競争」を考えた場合においても、この主張はあながち間違ってはいないと思われます。


談合は違法


規制緩和された世界において、会社は価格競争にさらされ易いと前述しました。

この様に、(ライバルの会社同士が、そこそこの値段設定で統一すれば良いのですが)チキンレースのようにドンドンと薄利多売になっていく(価格競争に晒され続けていく)現象は、経済学でいう所の「囚人のジレンマ」に該当します。

『囚人のジレンマとは、お互いに協力するほうが得をするのに、自分の利益を最大限にしようとしてしまい、結果的に最大限の利益が得られないことの総称のことを指す』

では、例えばA社とB社が「同一価格で商品を売ろう」と示し合わせれば、価格競争は起こらず、どちらも儲けられるのではと考える人がいるかもしれません。

ですが、これは「談合(だんごう)」であり独占禁止法に違反しているとうことになって逮捕されてしまいます。

『談合とは、価格競争を避けるため、あらかじめ話し合いなどで販売価格や入札価格を決めておくことを指す』


例えば、牛丼屋がお互いに示し合わせて、牛丼の値段を一杯1000円にしてしまうと、消費者は高値でしか牛丼を食べられなくなってしまいます。

従って、消費者に恩恵がいくように(規制緩和された業種にとって)常に会社同士が競争することが求められるのは当然という事になります。


一方で、バス会社など安全性を重視する業種では、価格競争に巻き込まれることが必ずしも良いとは限りません。

なぜなら、例えばバス会社が価格競争に巻き込まれると、まず第一に人件費にメスが入れられることになってしまうため、その結果として従業員が減らされたり、一人の社員に長時間勤務を強いる企業が出てくるかもしれないからです。

そして、これらのブラック企業化が起こると、良い人材が集まらなかったり、従業員も疲労困憊で居眠り運転をしてしまったりで、大事故につながることになってしまいます。

このことから、安全性を重視しなければならない業種における価格競争は、負の側面によって国民に大きな被害をもたらしてしまう可能性を秘めています。


重複しますが、価格競争にはメリットのみならずデメリットも存在し、規制緩和を推進するか否かを巡って、なかなか国会での議論が前へ進まないことも多かったりします。

そして、価格競争によるデメリットは、そっくりそのまま医療業界にも当てはまり、今でも病院をどの程度価格競争に巻き込んでも良いかについては、意見が分かれています。

まぁ、今回のテーマである「理学療法士・作業療法士の開業」というテーマからは談合は外れる話題ではありますが・・・・


理学療法士・作業療法士が整体師として競争を勝ち抜くために


「同じ製品の機械」を売る際には価格競争が起こりやすいとされています。
なぜなら、既に客観的なデータが出そろっているので、あとは値段でしか勝負ができないからです。

一方で整体は「価格以外」での勝負が可能となります。
そんな「価格以外」で最も分かり易いのは「整体の技術力」かもしれません。
ただ、新規な客を増やすためには「一度体験しなければ分からない要素である整体の技術力」以外にもアピールしたほうが良いという事になるかもしれません。

例えば、新規顧客に来店してもらうために、お試し価格、初回限定価格などは有効かもしれません。
あるいは、ポイントカード、紹介客は初回に限り半額なども良いかもしれません。

もしくは、値段以外の要素として以下のようなブランディングも有効となるかもしれません。
・自身が理学療法士・作業療法士であること
・今までどれだけ多くの患者に携わってきたかということ
・どれだけ多くの研修に参加してきたか
・どれだけ多くの素晴らしい資格を有しているか
・客が施術を受けた際の体験談のアピール
・・・・・・・などなど。


重複しますが、整体で提供するものは「機械などの客観的データのみで構成された商品」ではなく「客の症状の変化」などの主観的な要素が多分に含まれています。
従って、上記のようなブランディングが新規顧客の獲得に作用することはもちろんのこと、プラシーボ効果として「客の満足度自体」にも影響を及ぼす可能性を秘めています。

※ただし、残念なことに競争に勝つためのブランディングが白熱してしまい、(他の医療・医学を学んでいない無資格者と同様な)ぶっ飛んだ内容の誇大広告を出す理学療法士や作業療法士も増えているのが現状です。


「理学・作業療法士の開業」と「製品差別化」


ここまでの記事で「同じ商品を売っているケース」だと、価格競争しか(客を獲得する)手段が無い」と、何度も記載してきました(機械製品の販売は特に)。

ですが、業種によっては新しいサービスを生み出したり、サービスを向上させることで、少しずつ差別化をして消費者を獲得することが可能となります(整体もこれに含まれているかもしれません)。

これは経済学では「製品差別化」と呼ばれ、以下のような意味を持ちます。

『特定のタイプの消費者の好みに合わせることで、独占力を高めて利益を得ようとすること』

例えば、ある程度規格が決まっている軽自動車(全長3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2m以下、総排気量660cc以下の車)でも、色違い、デザイン違い、女性or高齢者向けなどの「製品差別化」によって消費者にアピールできます。

※ちなみに車はブランドや燃費で検討することも多いと思います。
※従って、2016年に発覚した三菱自動車の燃費不正は、燃費目的で買っていた客を裏切る行為でありブランドイメージも失墜させたという事で、今後の差別化には大きな痛手になると思われます。


この「製品差別化」を、理学療法士・作業療法士が整体院を開業する場合に当てはめると、(前述したブランディング以外では)以下のようなアピールは差別化につながるかもしれません。

・腰痛専門
・頭痛専門
・股関節専門
・痛み無くソフトな手技
・足底板も用いる
・適切なセルフエクササイズ・日常生活も指導できる
・・・・・・・・・・・・・・・などなど


理学療法士・作業療法士というアピールへの考察


理学療法士・作業療法士には開業権がありません。

従って、理学療法士・作業療法士が開業して「理学療法(あるいは作業療法)を提供する」というのは違法となります。

つまり、開業するためには(理学療法士・作業療法士としてではなく)整体師として整体を提供する(あるいはコンディショニングやリラクゼーションなどでも良いですが)という形になります。

一方で、理学療法士・作業療法士の資格を有していることを知らせるのは違法とはなりません。

従って「理学療法士・作業療法士としての知識や技術を活かして、他とは次元の違う整体を提供する」などのうたい文句は「理学療法・作業法を実施している」ということになはらず、違法ではありません。

※「理学療法士という資格を持った整体師が理学療法の知識を活かして整体を提供する」という表現はOK
※「理学療法士という資格を持った整体師が理学療法を提供する」という表現はダメ

そして、「整体師」という誰が就いても構わない(無資格者でも構わない)職業において、理学療法士・作業療法士という国家資格を有していることを知ってもらうことは、ブランディングとして一定の価値はあると思われます。

もし「そんな肩書き関係ない」と言いつつプロフィールに資格を載せている人は外しましょう。
理学療法、作業療法を提供するわけでも、肩書きとして利用する(有資格者だと知らせることでクライアントを安心させるという、クライアント目線なブランディングも含む)わけでもないなら辞めましょう。
関係ないなら、クライアントにとって紛らわしいだけです(単なる「整体師」のほうがシンプルせ良いじゃないですか?)。

また理学・作業療法士と同様に国家資格である柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師よりも(開業者の数が少ないという意味で)「珍しい」と思ってもらえることも、同じ国家資格であっても差別化が図れる要因となり得るかもしれません。

※ここでの比較は、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の中でも、保険に頼らず自費診療をメインにしている人達との比較です。

または、何らかの理由で(いろいろありそうなので割愛しますが)理学療法士・作業療法士に良いイメージ・クリーンなイメージがあるのかもしれず、それが他職種との差別化につながることも有り得ます。


ただし理学・作業療法士の整体開業における将来性として、今後も(整体師として)開業する理学療法士・作業療法士が増え続けてくると「理学療法士」「作業療法士」というブランドの効果は薄れてくると思われます。

なぜなら最近では、理学・作業療法士とは到底思えないレベル(無資格者の整体師が提唱するレベル)のブッ飛んだブランディングをなりふり構わず実施して、非科学的な内容を(理学・作業療法士として医学も勉強してきた私が言っている正しいのですと言うスタンスで)世間に吹聴するセラピストや、セミナーを開いて自身の養分にするような悪徳商法セラピストも増えているからです。

そして将来は、これらのブットンだブランディングや悪徳商法がさらに白熱すると思われ、そうなってくると「理学療法士・作業療法士」に対する世間のイメージが、将来的には猶更「他の整体師」と同列に近づいていく可能性があると言えます。

※つまりは特別な価値が剥落して「まっとうな競争社会」に晒されるということになると思われます。

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